vol. 66 鯛は何故おめでたい魚なのか

 
  暮も近い12月の一日、築地で鯛料理の実演講義ガ催されました。
 講師は江戸会席料理の家元、柳原一成先生。
 お弟子さんを5名も従えての豪華版。
 これを逃すてはないと、終始目を凝らし集中受講となりました。
 
 まな板に乗せられたのは、70~80cmの体長の立派な『真鯛』  
 当然、天然物のマダイです。
 養殖のものとは色が違う。鰭{ヒレ)の形が違う。
 そして、鼻の穴も違うのです。
 魚の鼻の穴をあまり意識して見たことの無かった私は、こんな
 ところも違うのかと、びっくりでした。
 
  早速、ウロコを落とす。
 そして頭を切り落としながら、「鯛がおめでたいのは、何故だか
 分りますか?」と柳原先生。
 ウロコを数個取り出して、受講生に廻しはじめる。
 「透かして見てください。どお?何か見えるでしょ?」
 見える、見える、何か山型のものが・・・
 あっ! 富士山だったのだ。富士は日本一の山。
 これも鯛が縁起の良い魚の謂れの一つだったのだ。
 「おーっ」という歓声があがる。
 会場内ガ驚きと幸せな気分に包まれました。
 とても良いものを見たと、私も心底思いました。

 さらに鯛には『鯛の鯛』というものがあります。
 『鯛の鯛』とは、肩甲骨と烏甲骨がつながった状態のもので、
 鯛の形に似ていることからこう呼ばれています。
 めでたい鯛の中で、さらにめでたいもので、一匹に一対、合わせて
 2個あります。
 でも、この部分は食べられません。

  先生のお手許を見ると、包丁がいやに小さく見える。
 出刃包丁も刺し身包丁も。
 そう、近茶流は江戸時代、文化、文政の頃に興った女性のための
 会席料理だったのです。
 宗家も先代の敏雄先生の代から男性に代わったのです。
 それ以前は女性が宗家だったのでした。
 だから、調理器具も小ぶりで女性ガ扱いやすい:サイズになっていたの
 でした。
 
  この日は、「鯛の平造りと皮霜造り」「鯛かぶら」と「鯛茶」。この
 三品をお盆立てにして全員に。
 お刺し身は勿論いうことなし。特に皮霜造りは、皮つきの腹身に
 熱湯をかけ、ちじんだところで冷水につけたもので、歯応えといい、
 脂を抑えた味といい、フグに似た滋味でした。
 「鯛かぶら」は、旬の聖護院かぶらと鯛のうすあじ仕立て。
 最後の『鯛茶」は、磨きごまを煎ってすり鉢であたり、醤油と酒の
 調味料に、あらかじめ鯛をあえておいたところがミソでした。

  わさびも本物をその場ですりおろしたもの、三つ葉は、2cmほどの
 小口切りに。 
 炊きたてのご飯をお茶椀に盛り、鯛を乗せ、三つ葉を散らす。
 熱々の番茶を張り、わさびを点盛りにする。
 ごまの香ばしさ、三つ葉の上品な香りと食感が絡み合い、
 そこに本わさびのツーンとした辛味が味をひき締める・・・
 なんとも口福を実感できた極上の鯛料理でした。

 鯛は魚の中の魚。高級魚として王者の風格を誇っています。
 その上、高蛋白、低脂肪の栄養面でも優れた蛋白源です。
 たまに、ハレの日の食卓にのせてあげて欲しいと思います。

 築地の場外を歩きながら、どうしても皮つきのお造りを作りたくなりました。
 それには、あの近茶流の柳刃包丁が欲しい。
 洋服を一着我慢して、あの柳刃を買おう! そう決心した私でした。
 
    めでたさも どか雪降って かき消され


  
 









 



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